「調味料」から「贈り物」へ。切り口を変えるだけで価格は変わる
2026/08/31大阪・梅田の阪急百貨店、地下2階へ降りるエスカレーター。
まだ売り場が見えていないのに、ふわっと香ばしい匂いが上がってくる瞬間があります。
「あ、深堀さん、来てるな」
ゴマソムリエの深堀さんが阪急百貨店に出店されている時は、ゴマの香りが売り場全体に漂っているのです。
648円のすりごまが飛ぶように売れる
ゴマソムリエの深堀勝謙さん。京都でごまの専門店を営まれている経営者です。
ごま一本で事業をどんどん広げてこられた方で、年に5〜6回、阪急うめだ本店の地下2階で1週間から10日ほどの催事をされています。
今回も開催中と聞いて、昨日買いに行ってきました。

そのごまが1袋648円。
スーパーですりごまを買うと、だいたい200円するかしないか、ですよね。単純計算で3倍以上です。
それでも深堀さんのブースはいつも行列。しかもお客さまが、20個、30個とまとめて買っていかれるんです。
「ごま、そんなに何に使うの?」と最初は思いました。
でも、みなさん自分で使うためだけに買っているわけではないんですね。
友達に配るために買っているんです。
私も行くたび、最低3個。多いときは6個、8個。家に常にストックして、どこかへお邪魔するときや、お土産をいただいたお返しにお渡ししています。
「調味料」から「贈り物」へ、意味づけが変わると価格が変わる
ここが、私がいちばん面白いと思っているところです。
ごまを「家の調味料」として見ると、648円は高い。
でも「誰かへの贈り物」として見ると、5〜600円って、むしろちょうどいい。
気軽に渡せて、でも安っぽくない、絶妙な価格帯なんです。
しかもごまって、たいていのご家庭で使いますよね。もらって困らない。
あったら便利。それが飛び抜けて美味しいとなれば、なおさら嬉しい。
贈り物としての条件が、きれいに揃っているんです。
正直に言うと、私は深堀さんに出会うまで「ごまをプレゼントする」という発想を持っていませんでした。
きっかけは、私自身が人からいただいたこと。そこから今では、すっかり私の定番の手土産になっています。
同じ商品でも、「実用品」という切り口から「贈り物」という切り口に置き換えるだけで、価格帯はぐんと上がる。
そして、贈られた人が次のお客さまになっていく。
これ、業種を問わず応用できる考え方だと思うんです。
ご自身の商品やサービス、「誰かに贈るもの」として見たら、どんな見え方になりますか。
もうひとつの理由は、社長の人柄
ただ、意味づけの話だけでは、あの行列は説明がつきません。
まず、単純に美味しいんです。
深堀さんのごまは、すって作るのではなく、臼に入れて杵でついて作られます。
だから香りの立ち方がまったく違う。
袋を開けた瞬間、ふわーっと広がるあの香りは、ちょっと感動があります。
エスカレーターの上まで香りが届くほど、ですから。
そしてもうひとつが、深堀さんご自身の魅力です。
深堀さんは、稼ぐだけの人ではありません。
ご自身が事業を組み立ててきたノウハウを人に伝えたい、特に女性が事業をやるときに応援したい、という思いをお持ちなんです。
私と同じ方向を向いてくださっているんですね。
実際、いろいろな女性経営者と組んで、30人規模の講演会をあちこちで開かれています。
そのお話が本当に面白くて、私もすっかりファンになってしまいました。
だから、私が阪急にごまを買いに行くのは、深堀さんに会いに行くことでもあるんです。
ごまをついておられる横で「深堀さん、また来たよー」と声をかけて、5分ほど立ち話をする。
最近考えていること、こんなふうに世の中に貢献したいよね、という話。
大した内容ではないんですけど、その5分がいいんです。
朝10時から夜8時まで、社長がずっと店頭に立って、ごまをつき続けている。
来られたお客さまとにこやかに言葉を交わして、心を通わせている。
その姿を見ると、私も「よし、また頑張ろう」と思うし、「深堀さんが作ったごまだから、周りの人にもお裾分けしたいな」という気持ちが自然に湧いてくるんですよね。
商品に「その人」が乗って、遠くまで届いていく
3倍の価格で飛ぶように売れる理由を、私はこう整理しています。
商品そのものが美味しくて、香りという形で感動まで届けている。
そして社長の人柄が、商品に乗っている。
だからお客さまは「会いに行くために買う」し、「この人が作ったものだから伝えたい」と思って人に渡す。
渡されたごまが、また新しい人のところへ届いていく。
小さな組織で頑張っている私たちにとって、ここは希望だと思うんです。
値段を下げる勝負をしなくても、意味づけと人柄で、ちゃんと選ばれる道がある。
ちなみに深堀さん、9月7日のNHK「あさイチ」に出演されるそうです。「シン“ごますり法”」というテーマだとか。
あの香りはテレビでは伝わりませんが、深堀さんの人柄はきっと画面越しでも伝わると思います。私も楽しみに拝見します。




